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AI開発は内製か、開発会社に頼むか|受託開発・内製化の判断基準

AI開発を内製するか、AI開発会社に受託開発で依頼するかを決める5つの問いを整理した。IPAの調査に見る内製化の現状、請負と準委任の違い、依頼の前に決めること、内製化に移すための契約の条件を表にまとめた。

AIを業務に組み込むと決めると、次に出てくるのが「社内で作るか、AI開発会社に頼むか」という問いだ。社内に作れる人は少ない。かといって外に頼めば、作り方が社内に残らない。どちらにも理由があるので、議論が堂々巡りになりやすい。

私の見方では、この問いは会社として一度だけ決めるものではない。作るものごとに、5つの問いで決める。そのうえで、開発会社に頼む部分は契約の形と引き取るものを先に決め、いずれ社内に移したい部分は最初の契約に移す条件を書いておく。以下、日本企業の内製化の現状、進め方の3つの選択肢、判断の問い、受託開発の契約、依頼の前に決めること、開発会社への質問、内製化への移し方の順に整理する。

作る前に決める要件はAI開発の要件定義に、費用の内訳はAI開発の費用の内訳に分けて書いた。業務の現場に入ってAIを作るエンジニアの職種はFDEとは?にまとめてある。

日本企業のシステム開発は、まだ外部委託が中心だ

IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」は、日本・米国・ドイツの企業を対象に、2025年2月上旬から3月下旬に行った調査だ。AIに限らないシステム開発全体の数字だが、内製か外注かを考える出発点になる。

項目日本米国
コア事業・競争領域のソーシング:内製による自社開発28.2%48.5%
コア事業・競争領域のソーシング:外部委託による開発37.8%30.6%
システム開発の内製化:内製化を進めている22.3%46.4%
システム開発の内製化:必要な部分は内製化済み16.7%37.1%
システム開発の内製化:外部開発を今後も利用予定で、内製化は進めていない29.3%6.5%

出典はIPA「DX動向2025」の図表2-13と図表2-14で、回答した日本企業は1,480〜1,500社、米国企業は509社だ。日本では、事業の核になる領域でも外部委託による開発がいちばん多い。一方で、内製化を進めている日本企業が挙げた課題は次の通りだ。

内製化を進めるうえでの課題(日本、内製化を進めている334社)回答率
人材の確保や育成が難しい82.3%
新しい技術への対応が難しい48.8%
内製化には利点も欠点もあるため、判断が難しい34.7%
外部開発したシステムの内製化への移行が難しい19.5%

私の見方では、AIの開発は上位2つの課題に同時に当たる。作れる人が少ないうえに、使うモデルや道具の入れ替わりが速い。3つめの「判断が難しい」が3割を超えている点も見逃せない。内製化は方針を掲げるだけでは進まず、何を基準に内製と外注を分けるかを決める必要がある。4つめの「移行が難しい」は、外に頼んで作ったものを後から社内に移す難しさを示している。この点は最後の節で扱う。

AI開発の進め方は3つある

内製か外注かの二択で考えると、選択肢を狭めてしまう。私の整理では、進め方は3つある。

進め方誰が作るか主な契約終わったとき社内に残るもの向いているものつまずきやすい点
内製社員なし(雇用)システムと、作る力事業の核で、出したあとも頻繁に直すもの作れる人が集まるまで始まらない
AI開発会社への受託開発AI開発会社請負か準委任契約で引き取ると決めたもの仕様を決めやすく、出したあとの変更が少ないもの直すたびに見積もりと契約が要る
開発会社と一緒に作り、社内に移す開発会社と社員準委任が中心システムと、移した分の作る力事業の核だが、作れる人がまだいないもの移す条件を決めないと外注が長引く

私の見方では、生成AIを使うシステムは、作って終わりになりにくい。プロンプトの調整、評価データの追加、モデルの更新への対応が、出したあとも続く。だから内製か外注かの議論の中心は、最初に誰が作るかより、出したあとに誰が直し続けるかにある。

3つめの進め方は、内製と受託開発のどちらかを選べない場合の妥協ではない。作る力を外から借りながら、直し続ける力を社内に育てる、という独立した選択肢だ。

内製か開発会社かを決める5つの問い

判断は会社単位ではなく、作るものごとに行う。同じ会社の中でも、社内の問い合わせに答えるAIは開発会社に頼み、事業の中核の判断を支えるAIは社内で作る、ということがあってよい。次の5つの問いに答えると、どちらに寄せるかが見えてくる。表は私の整理だ。

問い内製に寄せる答え開発会社に頼める答え
1. 事業の競争力の源になるか自社の勝ち方に直結するどの会社でも同じ形になる業務
2. 出したあと、どのくらいの頻度で直すか週や月の単位で直し続ける一度作れば大きく変わらない
3. 業務の例外や暗黙の決まりは多いか担当者しか知らない判断が多い手順が文書になっている
4. 外に出しにくいデータを使うか社外に渡す範囲を決めにくい渡す範囲と使い道を契約で決められる
5. 作れる人と直せる人が社内にいるかいる、または採用の見込みがあるいない、すぐには採れない

1と2は内製に寄せたい理由を測る問いで、5は内製できるかどうかを測る問いだ。1と2が内製を指しているのに5の答えが「いない」なら、3つめの進め方、つまり開発会社と一緒に作りながら社内に移す形が候補になる。

3は、外に頼んだときの伝わりにくさを測る問いだ。例外や暗黙の決まりが多い業務は、要件定義書に書ききれない。開発会社に頼むなら、作る人が現場の担当者と直接話せる体制にする必要がある。

4は、内製か外注かを直接決める問いではない。外部に渡すなら、渡すデータの利用範囲を契約で決めればよい。経済産業省は2025年2月18日に「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」を公表した。AIサービスの利用者が契約時に確かめる点をまとめたもので、提供するデータの利用範囲や、AI生成物の利用条件を考えるための基礎知識も解説している。

5は、IPAの調査で内製化の課題の1位だった人材の問題そのものだ。今いない人を前提に内製を決めると、採用が決まるまで何も始まらない。

AIの受託開発は、請負か準委任かで中身が変わる

AI開発会社に頼むと決めたら、次は契約の形だ。民法では、請負は「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」ことで成り立つ(第632条)。準委任は法律行為でない事務の委託で(第656条)、受ける側は善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負う(第644条)。請負は仕事の完成に、準委任は専門家として仕事をすること自体に報酬を払う形だ。ただし準委任でも、成果に対して報酬を払う約束はできる(第648条の2)。

AI開発でこの違いが効くのは、作る前に性能を約束しにくいからだ。経済産業省が2018年6月15日に公表した「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」は、学習済みモデルの内容や性能が契約の時点で特定できない場合が多いことを踏まえ、アセスメント、PoC、開発、追加学習の段階に分けて進める「探索的段階型」の開発を提唱した。モデル契約では、PoC段階の導入検証契約と、開発段階のソフトウェア開発契約を、どちらも準委任型としている。

IPAが2020年3月31日に公開した「情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)」も、機能の追加や優先順位の変更に柔軟に対応できるよう、請負ではなく準委任を前提にしている。

経済産業省のガイドラインは機械学習を念頭に置いたもので、既製の大規模言語モデルを業務に組み込む今の開発をそのまま想定したものではない。それでも私の見方では、出力が毎回同じとは限らず、作ってみるまで合格ラインに届くか分からない点は共通しており、段階に分けて契約する考え方はそのまま使える。

段階確かめること合いやすい契約発注する側が決めること
試す(PoC)業務のデータで合格ラインに届くか準委任合格ラインと評価データ、次の段階に進む条件
作る本番の権限や例外処理の中で動くか準委任。仕様が固まった部分は請負も引き取るもの、進み具合の報告の頻度
直し続ける出力の質が保たれているか準委任誰が評価し、いつ見直すか

表は私の整理だ。契約の形は個別の事情で変わるので、実際の契約書は法務の担当者や弁護士と確かめてほしい。

AI開発会社に依頼する前に決めておくこと

AI開発会社に依頼する前に、発注する側で決めておくことがある。ここが空いたまま依頼すると、開発会社が仮置きで埋め、その仮置きがそのまま要件になってしまう。表は私の整理だ。

決めること中身決めていないと
動かしたい数字処理時間、処理件数、回答の正答率など。1つに絞る作ったものの良し悪しを判定できない
AIに任せる範囲AIが下書きし人が確認する、のような人との分担間違えたときの責任があいまいになる
使うデータと権限どの文書やシステムを使い、誰が何を見てよいか本番の直前に権限の問題で止まる
出力の合格ライン評価データと、どれだけ合格すれば使えるとするか納品物を受け入れるかを決められない
出したあとの担当評価と改善を、誰がどの頻度で行うか出した直後から質が落ちていく
引き取るものコード、プロンプト、評価データ、手順書、設計の理由開発会社がいないと直せなくなる

引き取るものは、契約書に書いておく。経済産業省のガイドラインのモデル契約も、成果物の権利の帰属だけでなく、利用条件を細かく決めることで発注側と開発側の利益を調整する枠組みを示している。評価データの作り方はLLMの評価の作り方に書いた。

AI開発会社を選ぶときに確かめる質問

AI開発会社と一口に言っても、システム開発を広く請け負う会社、AIを専門にする開発会社、AI製品を売る会社の導入部門などがあり、得意な仕事が違う。会社の種類で選ぶより、次の質問への答え方で見る方が早い。表は私の整理だ。

質問確かめたいこと
提案した人は、作る工程のどこまで入りますか提案と実装の間で情報が落ちないか
試作ではなく本番で、いちばん長く動いているものは何か月ですか本番で動かした経験があるか
出力の質は、何で、いつ確かめますか評価の仕組みを作る前提か
預けたデータを、ほかの目的やAIの学習に使いますかデータの利用範囲が契約で決まるか
契約が終わったとき、何を引き渡しますか開発会社がいなくても直せるか
社内に移す場合、どの順番で主担当を移しますか内製化の計画を持っているか

どの質問も、答えが具体的かどうかを見る。「御社に合わせて柔軟に対応します」のような答えしか返ってこない質問があれば、そこが契約の前に詰めるべき点だ。現場に入って作るFDE(Forward Deployed Engineer)を名乗る会社を比べる基準は、FDE支援会社の選び方でさらに細かく扱った。

内製化を目指すなら、最初の契約に移す条件を書く

IPAの調査では、内製化を進めている日本企業の19.5%が「外部開発したシステムの内製化への移行が難しい」を課題に挙げていた。外に頼んで作ったものを、後から社内に移すのは簡単ではない。だから、いずれ内製化したいものは、最初の契約の時点で移す前提を組み込む。

私の見方では、移し方は次の3段階に分けると進めやすい。

  1. 開発会社が作り、社員はレビューと業務の知識の提供で入る。評価データ作りは最初から社員が担う。
  2. 一緒に作る。実装の主担当を部分ごとに社員へ移し、評価と運用の仕組みを社内に置く。
  3. 社員が作り、開発会社はレビューと難しい部分の支援に下がる。新しい業務への展開は社内で始める。

段階を進める条件は、期間ではなく状態で決める。たとえば「社員だけで評価データを更新し、プロンプトの変更を本番に出せた」を2段階目の終わりの条件にする。この条件が契約や計画に書かれていないと、一緒に作るはずの支援が、ただ外注が長引いただけの状態になる。

外部の専門家が社内のチームと一緒に作り、終わったときに社内で回る状態を残す支援の形はAIの伴走支援とはに、社内のAI人材の育て方はAI人材の育成にまとめた。

内製か、AI開発会社に頼むかで迷っているなら、まず作りたいものを1つ選び、5つの問いに答えてみてほしい。答えが割れたところが、相談で詰めるべき点だ。私たちの支援の中身と料金はサービス詳細に、社内でAIを作るチームを立ち上げる支援はFDEチーム立ち上げ支援に書いた。

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