「FDE検定」と検索すると、同じ名前の2つの制度が出てくる。一つはIoT検定制度委員会の「FDE検定制度」で、そのLevel 1が「FDE検定」と呼ばれている。もう一つは日本FDE協会の「FDE検定」で、5級から1級まである。どちらも2026年に始まった民間の制度で、運営も中身も違う。
FDE(Forward Deployed Engineer)は、顧客の現場に入り、業務の課題を見つけ、AIを使った仕組みを作って本番で動かすところまで受け持つ職種だ。職種そのものの説明はFDEとは?Forward Deployed Engineerの意味と仕事内容に、FDEになるための道筋はFDEになるには?に書いた。ここでは、2つの検定の公式ページに今何が書いてあるかを確かめ、受ける意味と、今できる準備を整理する。数字と日程は、2026年10月22日に公式ページを開いて確認したものだ。
「FDE検定」と呼ばれる2つの制度
先に全体を並べる。名前は似ているが、別の団体の別の制度だ。
| FDE検定制度(Level 1がFDE検定) | FDE検定 | |
|---|---|---|
| 運営 | IoT検定制度委員会(運営事務局は株式会社サートプロ内) | 一般社団法人日本FDE協会 |
| 段階 | Level 1〜3の3段階(検定・認定・認証) | 5級〜1級の5段階 |
| 試験 | Level 1は60分・100問・4肢択一の予定 | 試験形式は設計中 |
| 受験料 | Level 1は19,800円(税込) | 準備中 |
| 開始時期 | Level 1の本試験は2026年10月開始予定 | 記載なし |
| 公式ページ | IoT検定制度委員会 | 日本FDE協会 |
試験の中身と受験料が決まっているのは、今のところIoT検定制度委員会のLevel 1だけだ。日本FDE協会の方は、等級の考え方は公開されているが、試験の形式と受験料は決まっていない。
IoT検定制度委員会のFDE検定(Level 1)の中身
IoT検定制度委員会は、2026年6月にFDE検定制度の構想を発表した。発表では、この制度は「AIを使える人」ではなく「AIエージェントを活用して業務成果を継続的に創出できる人」を評価すると説明している(2026年6月の発表)。2026年9月3日にはベータ試験の申込みを始め、Level 1試験のスキルマップ(ベータ版)を公開した。ベータ試験の受付は、すでに終わっている。
3つのレベル
制度は、知識を確かめる「検定」、実践の力を確かめる「認定」、成果を確かめる「認証」の3段階でできている。
| レベル | 名前 | 何を評価するか | 状況(公式ページ) |
|---|---|---|---|
| Level 1 | FDE-A Associate(FDE検定) | FDEに必要な基礎知識と、業務課題へ応用する力 | 2026年10月 本試験開始予定 |
| Level 2 | FDE-P Professional(FDE認定) | 業務課題を整理し、AIやデジタル技術を現場で動く仕組みとして実装する力 | 2026年第4四半期に認定内容を確定予定 |
| Level 3 | FDE-C Consultant(FDE認証) | 現場実装で生み出した成果と、成果を組織へ定着・展開する力 | 2027年第1〜第2四半期に詳細を公表予定 |
Level 2は、実務ケースや実践課題を通じて、課題設定から設計、実装、検証、説明までを確かめる方式を検討していると書いている。Level 3は、改善前後を示すデータや運用の証拠などの資料と、面談やプレゼンテーションを組み合わせた審査を検討中だ。どちらも、評価方法や費用はまだ決まっていない。
Level 1の試験概要
Level 1の公式ページにある試験概要を、そのまま表にした。「予定」と書かれた項目は、正式決定時に更新されるとページに書いてある。
| 項目 | 公式ページの記載 |
|---|---|
| 正式名称 | FDEアソシエイト検定(FDE-A Associate) |
| 本試験開始 | 2026年10月開始予定。開始当初は週1回程度、将来的には毎日開催を予定。申込受付開始日と日程は後日発表 |
| 受験料 | 19,800円(税込) |
| 試験時間・問題数 | 60分・100問・4肢択一を予定 |
| 実施方法 | オンライン試験監督型 |
| 受験資格 | 特になし。前提資格もなし |
| 合格基準 | 後日発表 |
| 合格証明 | 合格証明書はブロックチェーンで提供予定 |
| 有効期限 | 現時点では有効期限なし |
出題領域は4つある。FDEの基礎と役割(定義、価値、倫理、ステークホルダーとの協働)、ビジネス・業務理解(業務プロセス、課題設定、価値仮説、効果指標)、AI・データ・技術(生成AI、AIエージェント、データ活用、システム連携の基礎)、実装と運用の判断(適用可能性、セキュリティ、法務・倫理、リスク、継続改善)だ。学習教材として、公式ページには『日本流FDE 公式テキスト』と、全167問の『日本流FDE 問題集[Level1:基礎編]』が載っている。無料の模擬問題もある。
この制度の「FDE」の定義
読むときに一つ気をつけたいのは、FDEの定義だ。IoT検定制度委員会は、FDEを「日本の事情を加味して独自に定義」したと書き、FDEにおける「Engineer」はプログラミングを行う技術者に限らない、と説明している。
一方で、FDEという職種名を広めた海外のAI企業の求人は、コードを書くことを求めている。たとえばOpenAIの東京のFDEの求人は、試作から本番の展開までの技術的な納品を受け持ち、必要ならコードに直接手を入れることを求めている。私の見方では、この検定が測るのは「業務とAIをつなぐ人」としての知識で、海外の求人が求める「本番で動くものを自分で作る力」とは重なる部分と重ならない部分がある。
日本FDE協会のFDE検定の中身
日本FDE協会は、FDEのスキルを認定する民間検定としてFDE検定を掲げている。公式ページには、5つの等級の考え方が載っている。
| 等級 | 呼び名 | 対象と水準(公式ページの要約) |
|---|---|---|
| 5級 | アシスタント | FDEに興味を持った入門者。FDEの基礎知識とAI活用の基本的な考え方を理解している |
| 4級 | オペレーター | AI・ITツールを業務で使い始めた実務者。AIツールを業務に当てはめ、定型的な業務改善を行える |
| 3級 | プラクティショナー | 顧客の現場で課題解決を実践するFDE。業務課題を特定し、AIや技術で解決策を設計・実装できる |
| 2級 | シニア | 複数案件をリードするFDE。複雑なプロジェクトを主導し、組織的な業務変革を進められる |
| 1級 | アーキテクト | FDEの組織・制度を設計する人。FDE戦略の策定、人材育成体制の構築、事業全体のアーキテクチャ設計ができる |
公式ページでは試験形式は設計中、受験料は準備中とされ、受験資格は等級ごとに設定予定で、飛び級や併願も検討中だという。ページは国家資格ではないと明記し、既存のIT資格を否定したり代わりになったりするものではないとしている。3級のサンプル問題と、約2分でできるスキル自己診断が公開されている。
FDE検定は受ける価値があるか
私の見方では、FDE検定は「FDEの仕事の地図を手に入れる」ためには使えるが、「FDEとして採用される」ための材料にはまだならない。理由は3つある。
- 始まったばかりで、合格者がまだいないか、いても少ない。採用する側が合格の意味を判断できる段階ではない
- このブログで確かめてきた各社のFDEの求人票に、これらの検定を応募の条件にしているものは見当たらない
- FDEの選考で問われるのは、現場で課題を見つけ、作り、数字を動かした経験だ。検定が今測れるのは、その手前の知識だ
それでも受ける意味がある人はいる。私の見方では、次の3つに当てはまる人だ。
| 当てはまる人 | 受ける意味 |
|---|---|
| 営業・企画・業務改善の担当で、AIの導入を任された人 | 業務、AI、リスクの論点を一通り押さえられる。社内で話す言葉がそろう |
| 社内でAI推進の人を育てたい人事・管理職 | 4つの出題領域を、育成の項目の下書きとして使える |
| エンジニアで、業務の側の論点に自信がない人 | 課題設定や効果指標など、技術以外の領域の抜けが分かる |
逆に、すでにFDEの選考を受けようとしているエンジニアは、検定の勉強より、今の仕事で一つ本番に出して数字を動かす経験を作る方が、応募の材料になると私は考えている。
今できる準備
本試験の申込受付はまだ始まっていない。待っている間にできる準備を、Level 1の出題領域ごとにまとめた。どれも、検定を受けるかどうかに関係なく、FDEの仕事にそのまま使える。
| 出題領域 | 今できる準備 | 手元に残るもの |
|---|---|---|
| FDEの基礎と役割 | FDEの定義を、IoT検定制度委員会の説明と海外の求人の両方で読み比べる | 自分が目指すFDE像の一文 |
| ビジネス・業務理解 | 自分の部署の業務を1つ選び、手順と時間、困りごとを書き出す | 業務の流れ図と、動かしたい数字(効果指標)の案 |
| AI・データ・技術 | 生成AIとAIエージェントで、その業務の一部を実際に試す | 試した結果と、うまくいかなかった理由のメモ |
| 実装と運用の判断 | 試した仕組みを本番で使うときの、情報の扱い・権限・誤答への備えを書く | リスクと対策の一覧 |
4つ目の「実装と運用の判断」は、知識だけでは身につきにくい。AIを本番に出すときにどこで止まるかはAIのPoC止まりを抜け出すに、AIエージェントに持たせる権限の考え方はAIエージェントのセキュリティに書いた。面接で何を問われるかはFDEの面接対策にまとめてある。
試験の申込受付が始まったら、合格基準と再受験の条件を確かめてから申し込むとよい。Level 1は、現時点で申込後のキャンセルと日程変更ができないと公式ページに書いてある。
発注する側から見たFDE検定
AIの導入を外に頼む会社にとって、相手の担当者がFDE検定を持っているかどうかは、今のところ判断の材料になりにくい。私の見方では、確かめるべきは、提案した人が現場に入って作るか、本番で動いたものを見せられるか、どの数字に責任を持つかだ。選び方の基準はFDE支援会社の選び方に7つにまとめた。
社内でFDEの役割の人を育てたい場合は、検定の出題領域を育成項目の下書きにし、実際の業務で一つ本番に出すところまでを育成の範囲にすると、知識と経験の両方が残る。私たちがどこまで入って何を作るかはサービス詳細に書いた。