FDE(Forward Deployed Engineer)の選考は、普通のソフトウェアエンジニアの選考と見るところが違う。コードを書けるかに加えて、顧客の曖昧な課題を分解できるか、顧客と話しながら決められるか、作ったものを本番で使われるところまで持っていけるかが問われる。
この記事は、日本でFDEを募集している会社の求人票に書かれた選考の流れから、FDEの面接で聞かれることと、その準備を整理する。募集している会社の一覧と求人票の読み方はFDEの求人・転職ガイドに、FDEに必要なスキルと経験の積み方はFDEになるにはにまとめた。FDEという職種そのものはFDEとは?Forward Deployed Engineerの意味と仕事内容で説明している。
各社が公開しているFDEの選考の流れ
求人票の中には、選考の流れや面接の中身まで書いているものがある。その記載を並べると、FDEの選考で何を見ているかが分かる。2026年10月20日時点の求人票から抜き出した。
| 会社と職種 | 求人票に書かれた選考と要件 |
|---|---|
| JAPAN AI(Forward Deployed Engineer) | 書類選考、コーディングテスト、面接(4〜5回)、内定の順。最終面接までにリファレンスチェックがある。面接では、AI/Agentの理解、System Designと実装力、曖昧な課題の構造化、日本語での説明力、Team Fitを確認する |
| SB OAI Japan(ソフトバンクから出向のFDE) | 面接の中で、システムデザインやケーススタディを含む実践的なディスカッションをする。面接・面談は原則対面。必須の要件に、5年以上のソフトウェアエンジニアリングか技術導入の経験、顧客折衝を含むプロジェクト推進の経験 |
| OpenAI(Forward Deployed Engineer – Tokyo) | 日本語と英語の両方が必要で、履歴書は英語で出し、面接は両方の言語での会話を含む。顧客と接する仕事を含む5年以上の経験を挙げる |
| JDSC(FDE) | 必須はエンジニアとしての開発経験(2年以上)と、要件が明確でない状況でも関係者と対話しながら課題を整理し、実装まで持っていった経験。FDEやAIプロジェクトの経験は不問 |
4社の記載に共通するのは、実装の力と、曖昧な課題を整理する力の両方を見ていることだ。どちらか一方だけの準備では足りない、と私は考えている。
FDEの面接で見られる5つのこと
求人票の記載を、面接で見られることに置き換えると、私の見方では次の5つになる。
| 見られること | 面接での聞かれ方の例 | 準備すること |
|---|---|---|
| 曖昧な課題を分解する力 | 条件のはっきりしない顧客の課題を渡され、何から手をつけるかを話す | 下の「ケース面接の進め方」の順番で、声に出して考える練習 |
| システムを設計して作る力 | LLMを使った仕組みを、データ、権限、評価まで含めて設計する | 自分が作ったものの構成図を、5分で説明できるようにする |
| 顧客と話して決める力 | 顧客の担当者と意見が割れたとき、どう決めたかを聞かれる | 要件を聞き、作って見せ、直した経験を1つ選んでおく |
| 本番まで持っていく力 | PoCのあと、本番で使われるまでに何をしたかを聞かれる | 本番で動いた期間と、動いた業務の数字 |
| AIの理解 | LLMの誤りや、エージェントにどこまで任せるかを聞かれる | 評価の作り方と、誤りへの備えを自分の言葉で話せるようにする |
AIの理解の部分では、LLMの評価(Eval)の作り方とハルシネーション対策に書いたことが、そのまま面接で話せる材料になる。
ケース面接の進め方
FDEのケース面接では、たとえば「ある会社の問い合わせ対応にAIを入れたい。どう進めるか」のような、条件のはっきりしない課題が出る(この問いは例として私が作ったもの)。私の見方では、見られているのは最終的な答えより、考える順番だ。次の5つの順番で話すと、面接官が考えの筋を追いやすい。
| 順番 | やること | 口に出す内容の例 |
|---|---|---|
| 1. 問いを確かめる | 誰の、どの困りごとを、何で測るかを聞き返す | 「減らしたいのは対応時間ですか、それとも回答の誤りですか」 |
| 2. 業務とデータに分ける | 今の業務の流れと、使えるデータを書き出す | 「問い合わせはどこに届き、過去の回答はどこに残っていますか」 |
| 3. 最初に作るものを決める | 全部ではなく、最初の一歩を選ぶ | 「最初は回答の下書きだけを作り、送るのは人にします」 |
| 4. 測り方を決める | 作ったものが効いたかを何で判断するかを決める | 「下書きをそのまま使えた割合と、対応時間で見ます」 |
| 5. リスクと次を話す | 誤り、権限、データの扱いと、その次の段階を話す | 「顧客の情報を入れるので、まず使ってよいAIの設定を確かめます」 |
避けたいのは、1つ目を飛ばして解決策から話し始めることだと私は考えている。FDEの仕事は、顧客が最初に言った課題と、本当に解くべき課題がずれているところから始まる。面接でも、最初の質問で問いを確かめる人は、現場でもそうするだろうと面接官は読む。
経験の話し方
FDEの面接では、過去の経験を深く聞かれる。私の見方では、話すときに次の3つを入れると、FDEに必要な力が伝わりやすい。
- 自分がやったこと。チームの成果ではなく、自分が決めたこと、自分が書いたコードを話す
- 数字。工数、対応時間、利用率など、何がどれだけ変わったかを話す。社外に出せない数字なら、変化の向きと大きさだけでもよい
- 本番。PoCで終わったのか、本番で使われたのか、どのくらいの期間動いたのかを話す
本番まで持っていった経験がないなら、PoCが止まった経験を話してもよい。なぜ止まったか、今ならどうするかを話せれば、それはFDEの仕事の理解を示す材料になる。PoCが止まる理由はAIのPoC止まりを抜け出すにまとめた。
AIツールを使ってよいかは選考の前に確かめる
FDEはAIを道具として使う仕事だが、選考でAIを使ってよいかは会社ごとに決まりが違う。たとえばAnthropicは、応募者向けの指針で次のように求めている。
| 場面 | Anthropicの指針 |
|---|---|
| 履歴書と応募の設問 | 最初の版は自分で書き、そのあとClaudeで整える |
| 持ち帰りの課題 | 指示がない限り、Claudeを使わずに取り組む |
| ライブの面接 | 指示がない限り、AIの支援なしで受ける |
コーディングテストや持ち帰りの課題でAIを使ってよいかが書かれていなければ、採用担当に聞いてから取り組む。聞くこと自体が、顧客の現場でルールを確かめてから動く人だという印象につながると私は考えている。
逆質問で確かめること
FDEの面接の逆質問は、入ったあとの仕事を確かめる場だ。私は次の4つを聞くことを勧める。
| 聞くこと | 質問の例 |
|---|---|
| 責任の終点 | 「FDEの仕事は、PoCの完了、本番の稼働、業務の数字の変化のどこで終わりますか」 |
| 実装の範囲 | 「本番に出すコードは、FDEが自分で書きますか。別のチームですか」 |
| 現場との距離 | 「顧客の現場には、週に何日、どの会議に出ますか」 |
| 評価のされ方 | 「FDEの評価は、売上、顧客の数字、本番の数のどれで決まりますか」 |
FDE Consultingも、FDEコンサルタントを募集している。働き方と条件は採用ページに、私たちが企業に入るときの進め方はサービスにまとめてある。