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ChatGPTの社内利用|導入の手順と、契約・ルール・定着で決めること

ChatGPTの社内利用を始めるときの手順を、使い方の3つの形、契約とデータの条件、社内のルール、定着の測り方に分けて整理した。デジタル庁の生成AIガイドラインの契約チェックの項目と、OpenAIの公式ページの記載をもとに書いている。

ChatGPTを社内で使う話は、多くの会社で「入れるか」から「どう入れるか」に移った。総務省の令和8年版情報通信白書によると、何らかの業務で生成AIを使う日本企業は86.4%に達している。一方で、使い方を会社が決めきれていない。Verizonの報告書(Data Breach Investigations Report 2026)では、会社の端末で67%の利用者が、会社のものではないアカウントでAIサービスを使っていた。

以下、ChatGPTの社内利用を始めるときの手順を、使い方の形、契約とデータの条件、社内のルール、定着の4つに分けて書く。料金とデータの扱いは2026年10月25日時点のOpenAIの公式ページの記載で、変わることがある。プランごとの管理機能の違いはChatGPT EnterpriseとBusinessの違いに、社内ルールの条文の作り方はAI利用規程の作り方に分けてある。

ChatGPTを社内で使う3つの形

最初に決めるのは、どのアカウントで使うかだ。形は大きく3つある。

形中身会社が管理できること向く場面
個人のアカウント社員が自分で無料版や個人向けの有料プランを使うほぼない。学習への利用は利用者が自分で無効化する会社として使う前の試し
会社のワークスペースChatGPT BusinessかEnterpriseを会社で契約する利用者の追加と削除、会社のIDでのサインイン、データの保持期間など全社や部門で文章作成や調べものに使う
APIで作る社内GPTOpenAIのAPIを呼ぶ社内専用のチャットや業務システムを作る画面、つなぐ社内データ、ログの残し方を自分たちで決める社内の文書やシステムとつないで特定の業務に使う

個人のアカウントは、会社から見ると利用者も入力も見えない。個人向けのプランでは、会話をモデルの学習に使うかどうかは「無効化可能」な設定で、利用者がそれぞれ操作する形だ。会社として設定を揃える手段がないので、私の見方では、業務で使うと決めた時点で会社のワークスペースに移すのがよい。設定の場所と、Gemini・Copilotとの比較はChatGPTに学習させない設定にまとめてある。

会社のワークスペースは、ユーザー2名から使える。Businessは従業員数2〜200名のチーム向けとされ、自分で申し込むセルフサービスのプランだ。スタンダードシートは年払いで月20ドル、月払いで月25ドル。Enterpriseは料金が公開されていない(カスタム価格設定)で、営業に問い合わせて契約する。

APIで作る社内GPTは、自由度が高い代わりに、作る人と運用する人が要る。Businessの料金にAPIの利用は含まれず、APIは別料金だ。OpenAIの説明では、2023年3月1日以降、APIに送られたデータは既定でモデルの学習に使われない。ただし不正利用の監視のためのログを既定で最大30日保存するので、扱うデータによってはその点も確かめる。社内の文書を検索して答えさせる仕組みを作るなら、RAGの作り方が次の読みものになる。

導入の手順

形を決めたら、次の順番で進める。順番を入れ替えると、ルールが決まる前に使い方が広がったり、契約したのに使う業務が決まっていなかったりする。

段階やること決める人
1. 業務と対象者を決める最初に使う部門と業務を2〜3個選ぶ。使う人数を数える事業部門の責任者
2. 形とプランを選ぶワークスペースかAPIか。BusinessかEnterpriseか情報システム部門
3. 契約とデータの条件を確かめる学習への利用、保存期間、管理者が見られる範囲、認証情報システム部門と法務
4. 社内のルールを決めて配る入力してよい情報、出力の確認、困ったときの連絡先責任者を1人決める
5. 試してから広げる1〜2か月試し、使われ方を見てから対象を広げる事業部門の責任者

段階1で数える人数は、プランの選び方に直結する。ワークスペースには合わせて2つ以上のシートが要り、シートの種類は自由に組み合わせられる。上位のプレミアムシートは年払いで月100ドルで、スタンダードシートの5倍の利用枠がある。全員にプレミアムシートを配る前に、使う量が多い人を試しの期間で見つけておくと、費用の見通しが立つ。社内でのAIの導入全体の進め方は社内AI導入の進め方に書いた。

契約とデータの条件で確かめること

契約で何を確かめるかは、デジタル庁の「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」が参考になる。府省が生成AIを調達し利用するときの指針で、最終改定日は2026年6月12日だ。その中の契約チェックシートは、契約で取り決める項目として、インプットの取り扱い(学習の有無、データの保存方法)、アウトプットの権利帰属、インシデントが起きたときの事業者の対応義務などを挙げている。民間の会社がChatGPTを契約するときにも、同じ項目で確かめられる。

OpenAIの公式ページの記載を、その項目に当てはめると次のようになる。

確かめる項目BusinessEnterprise
学習への利用既定で使わない既定で使わない
入力と出力の権利お客様に帰属(法律で認められる範囲)同じ
データの保持期間管理者が保持期間を設定できるカスタムのデータ保持ポリシー
会社のIDでのサインインSAML SSOがあるSAML SSOがある
利用者の自動の追加と削除SCIMはBusinessが「いいえ」ある
会話の監査ログの取得Compliance APIはBusinessが「いいえ」Compliance APIで取得できる
保存する地域の指定データレジデンシーはBusinessが「いいえ」日本を含む地域を指定できる
第三者の監査SOC 2 Type 2の監査は、Businessでも得られる同じ
データ処理の契約データ処理補遺(DPA)を締結できる同じ

学習への利用は、利用者が明示的に共有に同意した場合(フィードバックの送信など)は例外になる。社員に配るルールには、フィードバックを送るときは会話の中身に注意することも書いておく。

もう1つ、社員に伝えておくべきことがある。Businessでは、ワークスペースの管理者はワークスペース内のユーザーの会話履歴を閲覧・エクスポート・削除できる。会社が会話を見られることを知らずに私的な相談を書き込む社員が出ないよう、導入の案内で先に知らせる。

政府のルールは、民間の会社の判断の目安にもなる。同じガイドラインの利活用ルールのひな形の概要には、約款型クラウドサービスは原則として要機密情報を扱えないことを理解する、という項目がある。私の見方では、社外秘の文書を扱う部門で使うなら、約款に同意するだけの契約ではなく、データ処理の取り決めを結べるかを法務と確かめておく方がよい。

社内のルールで決めること

ルールは長くしない。社員が覚えておけるのは数項目だ。デジタル庁のひな形の概要は、要機密情報や個人情報の入力の可否を含む利用方法の遵守、出力結果の正確性や根拠を必要に応じ確認すること、リスクケースやその兆候を検知した場合の報告を挙げている。社内向けには、次の5つに絞ると配りやすい。

  1. 業務では会社のワークスペースだけを使う。個人のアカウントに業務の情報を入れない
  2. 入力してよい情報と、入力してはいけない情報を、具体例で示す(顧客名、契約書、人事の情報など)
  3. 出力は人が確かめてから使う。数字と固有名詞は元の資料と照らす
  4. 社外に出す文章や画像は、他社の権利を侵していないかを確かめる
  5. 間違って入力した、変な出力が出た、というときの連絡先を1か所に決める

禁止の項目を増やしても、現場が使わなくなるだけでは意味がない。角川アスキー総合研究所の調査(AI白書2026に掲載)では、全社共通のガイドラインを整えた企業でも、公式外のAIを使った経験がある人は46.9%で、一部だけ整備の企業の50.0%と大きく変わらなかった。同じ調査で、整えた企業の45.1%が「ルールが現場の実態に追いついていない」と答えている。私の見方では、ルールは最初の1か月で一度見直す前提で作り、見直しの日を最初から決めておく方が守られる。禁止だけで抑えようとしたときに起きることはシャドーAIのリスクと対策に書いた。

定着させるために決めること

契約してアカウントを配っても、使われるかは別の問題だ。私の見方では、定着の差は次の3つで決まる。

決めること中身決めないと起きること
最初の業務議事録の要約、問い合わせの返信の下書きなど、毎週ある業務を部門ごとに1つ選ぶ何に使えばよいか分からず、試した人だけが使う
使い方の型業務ごとの指示の文例や、社内で共有するGPTを作って配る人によって出力の質がばらつき、「使えない」という評価が広がる
測り方使った人の数、業務ごとの作業時間、出力を直した回数を月に1回見る費用に見合っているかが説明できず、次の年度の予算が通らない

測り方は、導入の前に決めておく。始めてから測ろうとすると、比べる前の数字が残っていない。作業時間は、試す業務について導入の前の1〜2週間に記録しておけば足りる。

Businessでも、Google Workspace、Slack、GitHub、Microsoft 365などとの連携は使える。OpenAIの説明では、アプリは接続先の既存の権限を尊重し、利用者はそれぞれ接続先で認証する。連携を使うと社内の文書を参照した答えが出せるので、定着しやすい業務が増える。その分、接続先の権限が広すぎないか(全社員が全部の共有ドライブを読める状態になっていないか)を先に見直しておく。

外部の導入支援を使うとき

ChatGPTの導入支援は、外の会社に頼むこともできる。頼む前に、支援の範囲を確かめる。

支援の範囲中身確かめる質問
設定と研修ワークスペースの設定、社員向けの使い方の研修研修のあと、使われ方を誰が見るか
業務の作り込み最初の業務を選び、指示の文例や社内向けのGPTを作る作ったものを社内の誰に引き継ぐか
社内データとの連携APIや連携の機能で、社内の文書やシステムとつなぐ運用と障害のときの対応を誰が持つか

私の見方では、ルールと、どの業務で使うかを決める役は社内に残す方がよい。外の人が決めたルールは、外の人が抜けたあとに見直されなくなるからだ。外の人に頼むのは、設定とデータの連携と、最初の業務の作り込みで、作ったものを社内の担当に渡すところまでを契約に入れておく。

社内データとの連携や業務システムへの組み込みまで進むと、現場に入って業務とAIの両方を作る役が要る。この役をFDE(Forward Deployed Engineer)と呼ぶ。どういう職種かはFDEとはに書いた。

私たちの支援の中身と料金はサービスページにまとめてある。

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