DXコンサルは、会社のDXを外から手伝う支援だ。決まった定義はなく、経営の構想を描くだけの会社もあれば、システムを作る会社、現場に入って使われるまで直す会社もある。同じ「DXコンサル」という名前で、仕事が終わる場所がまったく違う。
DXそのものには、経済産業省のデジタルガバナンス・コード3.0に定義がある。データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること、だ。定義の後ろ半分、業務や組織を変えるところまで行くには、提案書だけでは足りない。
この記事は、DXコンサルを選ぶ側の確認点をまとめる。AIを中心に置いた変革との違いはAX(AIトランスフォーメーション)とはに、AIの導入に絞ったコンサルの選び方はAIコンサルの選び方に書いたので、ここでは「DX」を名乗る支援を、実装と定着まで頼む前提で選ぶ方法に絞る。
DXの成果はどこで止まっているか
IPA(情報処理推進機構)が2026年7月16日に公表した「DX動向2026」のポイントは、DXの今の姿をよく表している。
| IPA「DX動向2026」のポイント | 中身 |
|---|---|
| DXの取組 | 8割近くの企業が何らかの形でDXに取り組んでいる |
| DXの成果 | 6割の企業は「成果が出ている」と答えた。過去2回の調査と大きな変化はない |
| 成果が出ている取組 | 「アナログ・物理データのデジタル化」と「業務の効率化による生産性の向上」が高い |
| 成果が低い取組 | ビジネスモデルの根本的な変革や、企業文化や組織マネジメントの根本的な変革は、相対的に低い |
| AIとの関係 | DXに取り組む企業のうち、DXの推進の一部、または中心としてAIを活用している企業は合わせて54.2% |
| 人材 | DXを推進する人材の量が「やや不足」「大幅に不足」の合計は85.5% |
私の見方では、この結果は「DXの入口までは進んだが、変革の段階で止まっている」と読める。紙をデータにする、作業を速くする、までは社内でもできた。その先の、業務の流れや組織を変える段階で、人が足りない。
DXコンサルを探す会社の多くは、この段階にいる。だから選ぶ基準も、構想の立派さより、変革の段階を誰がどこまで一緒に進めるかに置く方がよい。
DXコンサルの種類と、仕事が終わる場所
DXコンサルを名乗る支援を、私は次の4つに分けて考えている。特定の会社の話ではなく、仕事の形での整理だ。
| 種類 | 主な仕事 | 仕事が終わる場所 | 向いている相談 |
|---|---|---|---|
| 構想型 | 経営課題の整理、DXの方針と計画づくり | 計画書と提案書の納品 | 何から変えるか、全社で決まっていない |
| 開発型 | 要件定義とシステムの開発 | 仕様どおりのシステムの納品 | 作るものが決まっている |
| ツール導入型 | 特定の製品やSaaSの導入と設定 | 製品が使える状態になったところ | 使う製品を決めている |
| 実装伴走型 | 現場に入り、作って、使われるまで直す | 業務の数字が動き、社内で回るところ | 計画はあるが、現場で動いていない |
どれが良い悪いではない。相談の段階で、向き不向きが決まる。全社の方向がまだ決まっていないなら構想型から入る方が早い。逆に、計画書がすでに何冊もあるのに現場が変わらないなら、さらに構想型を重ねても同じことが起きる。
私の見方では、DXコンサル選びの失敗の多くは、自社の段階と相手の種類が合っていないことから起きる。最初の打ち合わせで、相手の仕事がどこで終わるのかを聞けば、種類はたいてい分かる。
実装と定着まで頼むときに確かめる7つの点
計画で終わらせず、実装と定着まで頼みたい場合、私の見方では、次の7つを商談で確かめるとよい。それぞれに、そのまま使える質問例を付けた。
1. 提案した人が現場に来るか
提案をまとめた人と、実際に現場に来る人が違うと、間で話が落ちる。
質問例: 「この提案をまとめた方は、どの工程まで関わりますか。週に何回、現場に来ますか」
2. どの数字を動かすかを最初に決めるか
DXの成果が測れないまま進むと、終わったあとに何が変わったのか誰も説明できない。動かす数字を最初に1つ決めるかを聞く。
質問例: 「最初の1か月で、どの数字を動かす対象にしますか。それは誰が決めますか」
3. 現場の業務を見に来るか
業務を変える支援なら、会議室だけでなく、業務が回っている場所を見る必要がある。
質問例: 「現場の担当者への聞き取りや、実際の作業の観察はしますか。どのくらいの時間を取りますか」
4. 作るところまで受け持つか
計画を作る人と作る人が別の会社だと、計画と実装の間で解釈がずれる。作るところまで受け持つのか、別の会社に渡すのかを確かめる。
質問例: 「計画のあと、システムやAIの仕組みを作るのは御社ですか。別の会社なら、どう引き継ぎますか」
5. 使われるまで直す期間があるか
作って納品した日は、変革の始まりにすぎない。使われ方を見て直す期間が契約に入っているかを見る。
質問例: 「納品したあと、使われ方を見て直す期間はありますか。その間は何を見て、何を直しますか」
6. 社内に何を残すか
外の人がいなくなると回らない状態は、DXではなく依存だ。終わったときに何が社内に残るかを最初に聞く。
質問例: 「契約が終わったとき、手順書、設計の記録、コードは当社に残りますか。社内の誰が引き継ぐ想定ですか」
7. やめる条件を先に決めるか
うまくいかない取組を続けると、費用だけが積み上がる。続けるか、やめるかの判断の場を先に決めておく。
質問例: 「どの時点で、何を見て、続けるかやめるかを判断しますか」
7つのうち、私の見方でいちばん差が出るのは4と5だ。ここを「別の会社の仕事」と答える相手は、計画を作るところまでが仕事だと考えている。それで足りる相談もあるが、実装と定着まで頼みたいなら、別の相手を探す方がよい。
DXコンサルの費用の考え方
相場より、何に払うかを見る
私が調べた範囲では、DXコンサルの費用の相場を示す公的な統計は見つからなかった。関わる人数と期間、作るものがあるかで、金額は大きく変わる。金額の比べ方より先に、何に対して払うのかをそろえる方が、違いが見える。
払う対象は、契約の形で決まる。民法には、仕事の完成に対して報酬を払う請負(第632条)と、事務を任せる準委任(第656条)がある。準委任でも、成果に対して報酬を払う約束ができる(第648条の2)。
| 契約の形 | 何に払うか | 向いている段階 | 確かめること |
|---|---|---|---|
| 準委任(期間で払う) | 関わった期間や稼働 | 構想や、現場での試行錯誤 | 月に何時間、誰が関わるか |
| 請負 | 完成したもの | 作るものが決まった開発 | 何をもって完成とするか |
| 成果に払う準委任 | 合意した成果 | 動かす数字が決まっている | 成果の測り方と、測る人 |
表の右の2列は私の整理だ。私の見方では、変革の段階は結果を事前に読めないので、最初から全部を請負で固めるより、段階ごとに契約を分ける方が、発注する側の損が小さい。どの形が当てはまるかは契約の中身で決まるので、迷うときは契約書を弁護士に確認してもらうとよい。
契約の前に読んでおく資料
AIを使うDXなら、経済産業省が2025年2月18日に公表した「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」が使える。提供するデータの利用範囲や、サービスの水準、AI生成物の利用条件を検討できるようにするための資料で、ビジネス部門の担当者が契約を最初に検討する場面も想定している。DXコンサルに渡すデータの扱いを決めるときに、相手と一緒に読むとよい。
頼む前に、社内で決めておくこと
DXコンサルに頼んでも、社内で決める人がいなければ、提案は紙のまま残る。私の見方では、頼む前に次の3つを決めておくと、最初の打ち合わせから話が具体的になる。
- 動かしたい数字を1つ。売上、処理時間、問い合わせの件数など、何でもよい
- その業務を毎日回している現場の責任者。経営層だけの打ち合わせにしない
- 社内で決める人。コンサルの提案を受けて、やる・やらないを決める人
自社の段階を測る道具として、国の制度も使える。DX認定制度は、デジタルガバナンス・コードに対応し、DX推進の準備が整っていると認められた企業を国が認定する制度で、対象は全ての事業者だ。認定を取るかどうかは別として、デジタルガバナンス・コードの項目で自社を見直すと、どこが足りないか、何を外に頼むかを社内で話しやすくなる。
変革の段階を、現場で進める人
IPAの調査が示すとおり、多くの会社のDXは、デジタル化と効率化の先で止まっている。そこから先に進めるのは、計画を書く人ではなく、現場に入って業務の流れを作り直し、使われるまで直す人だ。私の見方では、この役割はFDE(Forward Deployed Engineer)の仕事と重なる。
FDEという職種はFDEとは?Forward Deployed Engineerの意味と仕事内容に、FDEを掲げる会社を選ぶときの判断基準はFDE支援会社の選び方に、導入が定着しない理由はAI導入が失敗する理由にまとめた。私たちが提供している支援の中身と料金はサービスのページに書いた。