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AXとは|AIトランスフォーメーションの意味とDXとの違い

AX(AIトランスフォーメーション)とは、AIを前提に意思決定や業務の進め方を根本から見直すこと。人工知能基本計画(第Ⅱ期)の定義、DXとの違い、総務省とIPAの調査に見る日本企業の現在地、進め方の5つの段階を整理した。

AX(AIトランスフォーメーション、AI Transformation)は、AIを前提に、意思決定や業務の進め方を根本から見直すことだ。2026年7月14日に閣議決定された人工知能基本計画(第Ⅱ期)は、副題に「日本AX、より強く、より豊かに」を掲げ、行政と産業の両方でAXを進めるとした。

言葉としては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の次に来たものに見える。実際、何が違うのか。AIを入れればAXなのか。ここでは、政府の文書と企業の発表から意味を確かめ、DXとの違い、日本企業の現在地、進め方を整理する。AIを使った業務の作り直しを、現場に入って本番まで受け持つFDE(Forward Deployed Engineer)の立場から書く。FDEという職種はFDEとは?Forward Deployed Engineerの意味と仕事内容で説明している。

AXの意味——政府と企業はどう使っているか

AXの定義として、いま最も参照しやすいのは政府の文書だ。人工知能基本計画(第Ⅱ期)は、第1章の基本構想で次のように書いている。

あらゆる組織で、AIを前提として意思決定や業務の進め方を根底から見直す「AIトランスフォーメーション(AX)」を進めていく。 (内閣府「人工知能基本計画」第Ⅱ期、2026年7月14日閣議決定。原文の全角英字を半角にした)

同じ計画は、社会全体でAXに取り組むことを前提に、人とAIの協働の在り方や規制・制度を再設計するとし、日本の勝ち筋を、産業や行政の現場で使える領域特化型の「バーティカルAI」と、現実空間で価値を生む「フィジカルAI」の実装に置いている。また、エージェント型AIの社会実装を起点として、AX推進による大きな課題解決効果が期待できるとも書いている。計画の決定に先立つ2026年7月10日の人工知能戦略本部で、総理は「まずは行政から始める」と述べた。

2025年12月23日に閣議決定された第1期の計画には、「AX」という略語は出てこない。代わりに「AIトランスフォーメーション」が一か所あり、脚注で、AIを活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革して競争上の優位性を確立すること、と定義している。この定義は、後で見るDXの定義の「データとデジタル技術」を「AI」に置き換えた形になっている。

企業の側では、もう少し前から使われている。

発表時期AXの使い方
ソフトバンク(Gen-AX株式会社)2024年7月1日企業のAIトランスフォーメーション(AX)を支援する会社として発表。AXを、ビジネスプロセスにAIを組み込むことで業務などの効率化を目指す取り組み、と注記
マネーフォワード2025年4月(ITmedia AI+の報道)バックオフィス業務改善の「AXコンサルティング」を開始。DXならぬAXを推進するという
日立ソリューションズ公式ページ(日付の記載なし)「DX by AX toward SX」をスローガンに、AIトランスフォーメーション(AX)を進めると説明

政府の定義は「意思決定や業務の進め方を根底から見直す」、企業の注記は「業務の効率化」と、強さに幅がある。私の見方では、効率化で止まるものはAXと呼ぶ必要がない。AXと呼ぶ意味があるのは、AIがある前提で、誰が何を判断し、どの順で仕事が流れるかまで作り直すときだ。

DXとの違い

DXには、経済産業省のデジタルガバナンス・コード3.0(2024年9月19日改訂)に定義がある。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること、だ。

定義の文だけを比べると、DXとAXの違いは「データとデジタル技術」か「AI」かだけに見える。ITmediaエグゼクティブが2026年4月に報じた勉強会では、Algomaticの齋藤皓太氏が、従来のDXが「作業の一部をシステムに代替させること」をスコープとしていたのに対し、AXは「特定の作業フロー全体をend-to-endで自動化する変革」だと定義した。私もこの見方に近い。違いを表にすると次のようになる。

DXAX
変える単位作業(入力、集計、承認の回付)業務の流れ全体と、その中の判断
システムの役割決まった手順を正確に速く回す文章を読み、下書きを作り、手順の一部を自分で進める
人の役割システムに入力し、結果を判断するAIの出力を確かめ、例外と最終判断を受け持つ
作り方要件を決めてから作る試しながら精度と範囲を決める
管理の要点システムの稼働と正確さ誤答、情報の扱い、AIに持たせる権限

この表は私の見方による整理だ。AXはDXを置き換えるものではない。データが整っていない業務や、紙とハンコが残る業務では、AIを前提に作り直す前に、DXの段階の整理が要る。

日本企業の現在地

道具の導入は進んだ。総務省の令和8年版情報通信白書(2026年1〜2月の企業向け調査)では、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた日本企業は86.4%だった。生成AIを「積極的に活用する方針」または「活用する領域を限定して利用する方針」と答えた企業は68.9%で、前年度の調査の49.7%から上がったが、米国、ドイツ、中国より低いままだ。

IPAの「DX動向2026」(国内1,799社、2026年4〜6月の調査)では、生成AIを「導入している」企業は、2024年度調査の22.6%から2025年度調査の44.0%に伸びた。一方で、成果はまだ小さい。

IPA「DX動向2026」の結果数字
AI導入の効果が「期待以上」「期待どおり」の合計31.8%
具体的な効果として「業務が効率化したり迅速化した」91.6%
具体的な効果として「売上や利益が向上した」3.9%

同じ報告書は、AIエージェントの利用はいずれの部署でも低水準にとどまるとしている。私の見方では、これは「AIを入れた」段階と「AIを前提に業務を作り直した」段階の差だ。効率化の効果は出ているが、売上や利益に届いていない。業務の流れそのものを変えていないからだ。AIの導入がどこで止まりやすいかはAI導入が失敗する理由に書いた。

AXの進め方——5つの段階

私の見方では、AXは全社の構想から始めるより、一つの業務を作り直すところから始める方が速い。進め方を5つの段階に分けた。

段階やること終わりの目安
1. 業務を選ぶ量が多く、判断の基準を言葉にでき、数字で効果を測れる業務を一つ選ぶ業務の担当者と責任者が決まっている
2. 数字を決める処理時間、件数、誤りの率など、動かしたい数字と今の値を測る動かす数字が一つに決まっている
3. 業務を作り直すAIがある前提で手順と役割を書き直す。AIに任せる判断と、人が持つ判断を分ける新しい手順書と、AIに渡す権限の一覧がある
4. 本番で動かす小さく本番に出し、誤答と例外を記録して直す。情報の扱いと権限のルールを決める担当者が毎日使い、数字が測れている
5. 広げる数字が動いた型を、隣の業務に移す。運用の体制を作る二つ目の業務で同じ型が動いている

3つ目の段階が、DXとの分かれ目だ。今の手順のまま一部の作業をAIに置き換えると、効率化で止まる。業務の流れの作り直し方はAIの業務フロー設計に、動かす数字の決め方はKPIドリブンのAI導入に書いた。

4つ目の段階では、ルールと体制が要る。AIエージェントに業務を任せるなら、何を読ませ、何をさせ、何をさせないかを決める必要がある。社内の体制はAIガバナンスの体制づくりに、AIエージェントを入れる手順はAIエージェントの導入にまとめた。

AXを担う人

AXの段階を見ると、要る人がはっきりする。業務を理解し、AIで何ができるかを知り、作って本番で動かし、数字を測る人だ。企画だけをする人でも、言われたものを作るだけの人でも足りない。

私の見方では、これがFDEの仕事そのものだ。現場に入り、業務の流れを見て、どこにAIを入れるかを決め、作って本番で動かし、数字が動くまで直す。社内にこの役割を担う人がいるなら、その人に一つ目の業務を任せるのがいちばん速い。いないなら、最初の一つを外の手を借りて動かし、その間に社内の人に型を移すやり方がある。私たちが現場でどこまで受け持つかはサービス詳細に書いた。

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